リノベデザイナーが教える、お気に入りの住空間で過ごす幸せとは

「いまできる簡単な方法で、少しでも好みの住空間に変えたい!」「初心者でも取り組めそうな、簡単なリノベって何があるの?」。そんな疑問に応えるべく、今回はリノベーションデザイナーとして、主にマンションリノベーションの設計デザインに携わられている志水陽子さんのお宅にお邪魔し、「インテリアコーディネーターのお家訪問」と題した見学ツアーを開催。
自身で設計し、リノベーションされたというこだわりのお家を紹介していただきながら、デザイナーの立場だからこそ伝えられるリノベの注意点やおすすめの技などを教えていただきました。
さっそくお宅を拝見すると、古民家風のすてきな空間が広がり、居心地の良さそうな雰囲気が伝わってきます。
自宅は、憧れのカフェをイメージしてリノベーション
――まずは、志水さんご自身で設計・デザインされたというこだわりのお宅をご紹介していただきましょう。
志水:ではリビングダイニングに行きましょう。まず大きく変えたのは、キッチンですね。もともと壁付けのキッチンだったんですが、使い勝手や作業スペースを考えて、コの字型にリノベしました。キッチン収納に関しても、棚をつけてお気に入りの器は見せる収納にしたり、鍋などもインテリアに合うものは見せて、残りはしまうなどして、見せるものとしまうものを分けています。

――調理器具や食器など、お部屋の雰囲気に合うものは見せる収納にしているんですね。実用的であり、デザイン性もあるって一番すてきな方法ですね。
志水:やっぱりしまうものと見せるものを、どうバランスつけるかって大事。我が家は、作業の台の下に扉付きの収納を設けて、乾物や袋麺などのごちゃつくものはそこにしまい、自分の好きな色や素材のキッチンツールは見せるようにして、まとまりのある空間にしています。
Kurumi:棚に飾ってある食器は、実際に使ってらっしゃるんですか?
志水:使っていますよ。見せる収納の良いところは、使いたいときにすぐ使えて、片付けたいときにすぐにしまえるラクチンさだと思っているので、サッと取り出してコーヒーを入れたりと頻繁に使っています。食器や鍋類は、見えているもの以外にもまだあるんですが、ほかのものは全て見えないところに収納していますね。
防音・防寒もばっちりな古民家風の窓枠も立て付け
――そもそも志水さんは、なぜご自宅をリノベしようと思ったんですか?
志水:今はもうないのですが、吉祥寺にあった『横尾』というカフェが大好きだったんです。私がインテリアの世界に入るきっかけにもなった店で、古材を上手に使った本当にすてきな雰囲気のカフェでした。そんな大好きだったカフェのような空間を作りたいと思ってリノベを決意したんです。
――なるほど。思い描いた憧れの空間をリノベで再現されたんですね。

志水:はい。特にリビングは、そのカフェに近づけようとデザインした個所になりますね。『横尾』さんが、古材やアンティークを上手に使っているカフェだったので、私もその雰囲気を出したかったんです。そこで、少しでも古い感じを出したいなと思って、掃き出し窓の前に壁を作って、塗装した木の枠をつけた古サッシを取り付けました。二重窓みたいになっているんですが、古民家の窓枠のようになって自分でも気に入っています。防寒・防音にもなって利便性も増しましたね。
洗面所はホテルライクなシックな空間に
――洗面台もリノベで雰囲気がかなり変わったようですね。
志水:洗面所ってお客様が来る場所でもあるので、ここはちょっとこだわって、ホテルっぽく仕上げました。主人と一緒に相談して、こげ茶色のカウンターを選ぶなど、二人の意見を取り入れてデザインしました。
――確かに!もうどこのホテルかと思うような、明るい空間ですね。どのようにして雰囲気をガラリと変えたんですか?

志水:そうですね、やっぱり横や上のスペースを有効活用してあげると、収納力を上げながら、ガラッと雰囲気が変わったような感じにはできるんじゃないかなと思います。鏡も下まで全面にして、お手入れをしやすくしました。
Kurumi:こげ茶の洗面台って初めて見たんですが、木材なんですか?
志水:これはメラミンという塩ビ系の素材です。本当の木ではなくて木目調で水に強い素材ということで選びました。
Kurumi:雰囲気も良い上に、手入れも楽なんて一番いいですね。
どんな空間にしたいか、事前に想いを具体化するのが大切
――リノベーション向きの物件や、その選び方に何かポイントはあるのでしょうか?
志水:実際、向き不向きはあると思います。マンションって壁全部取れるんでしょって思ってらっしゃる方も多いと思うんですが、構造によっては取れないだとか、キッチンを対面にしたくても、排水の関係で対面ができないとか、正直そういうことは多々あります。あとはマンションの場合、管理組合の方で間取りを変えちゃいけないといったいけないとった制約があることも多いですね。

志水:なので、まずはどんな風にリノベしたいかという希望を具体的にして、それが叶う物件を探すというのが大事。あとマンションだと、管理がしっかりされているかも見るべきポイントです。何かあったときには大規模な修繕をするなど、しっかりとした修繕計画が立てられているところであれば、配管を綺麗にするなどは管理組合でやってくれてたりするので、管理に力をいれてるかというのは、かなり大事なんじゃないかなと思います。
――ありがとうございます。リノベの実情が伝わりますね。
細部にまでこだわりを詰め込んだ自分好みの住空間で過ごす幸せ
Kurumi:天井に配管が見えてるんですが、天井は高さを上げたんですか?

志水:はい、上げました。これは躯体を白く塗装しているんですが、躯体の風合いってマンションでしかない表情なんですよね。なので、それを利用してインテリアに含ませることで、何か既製品にはないようなアンティーク感みたいなものが出せるなと思って、天井を上げました。これは私もとても気に入っています。
Kurumi:確かに。雰囲気出ていますよね。あとドアもかわいいんですが、何かこだわりがあるんですか?

志水:トイレ、ウォークインクローゼット、洗面所のドアは、壁と色を合わせて白くし、枠も外して壁に馴染むようにしています。寝室と書斎のドアは木杢にして、ルーバーの窓のように風が抜けるようにしているんです。全部のドアを木杢にすると、圧迫感が出ちゃうので、白いドアと木杢に分けてみました。
Kurumi:ドアを変えるだけでも雰囲気がかわりますね。ルーバーは換気喚起にも良さそう。勉強になります。
ばんちゃん:先生、シュークローゼットのことで教えていただきたいんですが、ブーツはどのように収納されていますか?

志水:我が家は、備え付けのシューズボックスを取り払って棚をつけ、全部見せる収納にしているんです。棚を取り付けている金具部分が稼働レールになっていて、高さが調整できるようになっているんです。なので持っているシューズに合わせて調整していますよ。
ばんちゃん:すごい!高さの調節が可能な靴棚って便利そうですね!
Kurumi:またまた質問しちゃっていいですか?キッチンのところだけ床が違うなと思ったんですが、何の素材なんでしょう?

志水:よくわかりましたね。これも実はこだわっているんです。キッチンだけコンクリートのモルタルで土間を打っているんです。昔ながらの台所の土間みたいなものに憧れがあって、それを作ってみたくて、この一部だけコンクリートを敷きました。植物に水あげたり、キャンプ用品の準備をしたりなど、木じゃないところがあると傷つく心配がなく、意外と便利ですよ。
――先生のこだわりがたくさん詰まったお家なんですね。その一つ一つに意味があって、今日は本当に勉強になりました。
志水:やっぱり自分の気に入った空間で過ごすのはとても幸せなことだと思うんです。リノベに限らずDIYなどでも、ぜひチャレンジをしてみて欲しいなと思います。

今回のツアーでは、実際にリノベーションを手掛けるデザイナーという視点から、実例をもとにさまざまなリノベ方法を教えていただきました。リノベへの関心がより具体的になり、自分らしい住まいで暮らす幸せがどんなものかを具体的に考えるきっかけになったのではないでしょうか。

志水陽子さん
大学卒業後、着物の販売員としてアパレルメーカーに就職。その際に、店頭でのディスプレイの面白さから空間をデザインすることに興味をもつ。仕事をしながら資格を取得し、住宅リフォームのインテリアデザイナーに就職。8年間勤めあげ2級建築士も取得し、独立。フリーランスのリノベーションデザイナーとして活動を始める。
リノベ会社から業務委託で仕事を請け負い、主にマンションリノベーションの設計デザインを行う。リフォーム、リノベーションの仕事自体は通算10年ほど。また2017年に物件を購入し、『色あせない、建物に似合ったリノベーションデザイン』をコンセプトにリノベーションする。ジェルコリフォームコンテストで新人賞を取得。
手元や高い所などを視聴者にわかりやすく実況中継するために、株式会社デベロップジャパンのオンライン接客サービス「Air-DAM(エアーダム) https://www.djuxd.com/solution/air-dam.html」を使用しました。