北海道に移住、ローカルベンチャー起業。町の関係人口を創出する

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過疎化や高齢化の進む地方を蘇らせるため、2009年度に制度化された「地域おこし協力隊」の活動。スタートから10年以上が経過し、2019年度には全国1,071の自治体で5,500人以上の隊員が活動しています。

今回のゲスト、高橋毅さんも2016年度から地域おこし協力隊に参加し、生まれ育った神奈川を離れて北海道栗山町に移住。地域ブランドや地場産品のPR活動をはじめ、イベント運営、ふるさと納税の推進などに従事。栗山町役場や地域住民とともに濃密な3年を過ごし、2018年に北海道の地で起業を果たします。

高橋さんがなぜ栗山町で活動することになったのか? 栗山町の魅力や町の一員として活躍する現在の様子などを伺いました。

栗山町からオンライン座談会に参加してくれた高橋毅さん。

行政からの委託事業と自社の飲食店経営などに奮闘する日々

MC・Aya(以下、Aya):高橋さんは2016年に北海道栗山町に移住をされ、その後「合同会社オフィスくりおこ」を起業されました。現在はどのような活動をされているのでしょう?

高橋:行政からの委託事業としては商店街の活性化や、栗山町で「ふるさと応援寄付」と呼んでいるふるさと納税の業務に加え、地域おこし協力隊の採用業務などを行っています。それに対し、「cafe&barくりとくら」とゲストハウスの運営、町の特産品やオリジナルグッズを販売するECサイトなどを自主事業として行っています。

Aya:地域おこし協力隊の採用も行っているというお話でしたが、高橋さんもご経験者だとか?

高橋:私も2016年から3年間、地域おこし協力隊で活動していました。主な活動内容は、地域の農産物や名産品、飲食店などのPR業務などです。栗山町では“日本のワカモノ・ヨソモノが活躍できる町にしよう”というテーマを掲げ、新規隊員の受け入れを進めています。新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、人の多い都市部での暮らしに疲れちゃった方って結構多いと思うんですね。あるいは、地元を離れ新天地で自分らしく暮らしたいとか。「栗山町で新しいことにチャレンジしたい!」という方にぜひ参加してもらいたいですね。

Aya:高橋さんのような頼れるOBが採用窓口にいるだけで安心できますよね。

高橋:2021年度も採用を担当させてもらいまして、この4月から5名の新規隊員が栗山町に来てくれるんですよ。いろんな経験を積まれた方々なので、また新しい化学反応が生まれるのではないかとワクワクしています。

恩人からの一本の電話が移住へのきっかけに

Aya:高橋さんが栗山町に移住したのはどんなきっかけだったのでしょうか?

高橋:私は横浜で生まれ育って、大学から北海道にやって来ました。就職もそのまま道内にある企業に入り「じゃらん」という旅行情報誌を作っていた時に、栗山町役場の方が人事交流という形で1年間うちのオフィスに出向していたんですね。その方とは公私ともにとてもお世話になって、私が転職して横浜に戻ってからもよく連絡を取り合うほど仲良くさせてもらっていました。

Aya:そのご縁で栗山町に?

高橋:いつかまた一緒に仕事したいな、何かの形で恩返しできたらなと思っていたところに、たまたまその方から「栗山町の地域おこし協力隊に参加してくれそうな人いない?」と連絡をもらいました。これはもしかして私が恩返しするチャンスかもと思い、自分が参加したいと返事をしました。それで2016年に栗山町に移住し、地域おこし協力隊として活動を始めたという流れです。

Tom:その後、起業をするまでの経緯はどのようなものだったのですか?

高橋:地域おこし協力隊の任期が3年だったものですから、栗山町に来た当初は3年後経ったら横浜に戻ろうと考えていました。活動を始めてしばらくすると、この町で出会った方々にもっと恩返しをしたいという気持ちが湧いてきましてね。ひと言でいえば、この町とここに住む人たちが好きになったから栗山町に残ろうかなと。それで協力隊の仲間と一緒に起業しました。

高橋さんお気に入りの風景。冬になると畑やビニールハウスを純白の雪が美しく覆いつくします。

協力隊2年目には起業を意識。3年目にカフェをオープン

高橋:実際には、地域おこし協力隊の2年目で起業を意識していました。一緒に会社を立ち上げた石井くんは飲食業出身だったものですから、栗山町の地場産品を使った飲食店を始めようかという話になって。きちんと事業計画を作り、それに沿って3年目には一軒家をリフォームして「cafe&barくりとくら」をオープンさせました。

Tom:地域おこし協力隊で活動されている中、起業されたのですね。すごい行動力!

高橋:任期満了までに何とか自分たちのビジョンを形にしておきたいというのもありました。ですから3年目には事業をスタートさせて、運営しながら事業計画の甘さであるとか、ここはもっと工夫しようという試行錯誤を繰り返しておいて、任期満了とともに正式始動みたいなイメージで進めていました。

Tom: 1年間の助走期間があって、徐々に軌道修正していきながら事業を組み立てていくという感じですね。

「オフィスくりおこ」では飲食事業のほか、地域おこし協力隊採用など行政の委託事業も行っています。

おいしい農作物とPRに対する情熱がハンパない町・栗山

高橋:今日このイベントをご覧になっている方の中で、栗山町の場所を知っているという方はいらっしゃいますか?

Aya:すみません、私もすぐ出てこないですね(苦笑)。

高橋:ご安心ください。北海道に住んでいる方でも栗山町と聞いてパッと場所が説明できる人はあまりいません。悲しいことに栗山町は全国的にも、そして北海道の中でもあまり知られていない町なのですが、栗山町は札幌の市街地から車で東に1時間ほど、空の玄関口・新千歳空港からは50分弱の場所にある人口1万2,000人弱の町です。

Aya:道内の移動は時間がかかるなんてよく聞きますが、栗山町はアクセスがいいんですね。

高橋:そうですね、ですが札幌と新千歳空港に近いだけで、小樽の街並みや旭川動物園といった北海道ならではの観光資源がほとんどありません。おまけに海にも面していないので海産物もない。そんな町なのですが、実は自慢できるところもたくさんあります。

Aya:なんだろう? 高橋さん、すごく気になります!

高橋:町の資源でいうと、栗山町には道内最古の酒蔵「小林酒造」さんや、国蝶と言われるオオムラサキの生息地もあります。オオムラサキを保全していくために、町内の保護施設でサナギをふ化させるなどの活動を続けています。それからイベント関係ですと、毎年20万人が訪れる「栗山秋まつり」が有名ですね。駅前から300軒くらいの露店がずらっと並び、それは盛大なお祭りなんですよ。

高橋:昔から農業も盛んでして、年間を通していろんな野菜や果物を育てています。4月を迎えるとアスパラガスが、夏にはメロンとトウモロコシがとてもおいしいですし、秋は新米の「ゆめぴりか」やタマネギ、ジャガイモなどが旬を迎えます。秋の収穫シーズンを終えると、冬は小林酒造さんで日本酒造りが始まってと、そんな1年です。

Tom:いろんな地場の農作物があっていいですね。

高橋:私が特に推しているのがメロンですね。夕張メロンと同じ赤い果肉のメロンで値段は夕張産よりもだいぶお求めやすくて。ですが、味は決して夕張メロンに負けていません。ぜひ栗山のメロンを味わってもらいたいですね!

Aya:栗山町にゆかりのある人っているんですか?

高橋:タレントのバービーさんが栗山町のご出身ですね。あと私が来るより前に、町名と同じ栗山姓の有名人とコラボして何かやろうとなって、その時から北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督とは交流があります。栗山監督に尽力いただいて栗山町少年野球場を建設しましたし、実際に監督も町内に家を建てられて、ホームで試合がある日は栗山町のご自宅からスタジアムに通われているっていう、そんなご縁もあります。

Aya:栗山姓繋がりで栗山監督とそんなご縁があったんですね。

ユーモアたっぷりの栗山町のPRポスター。

気負うことなくまずは移住。活躍の場がきっと見つかる

Aya:それでは最後に、これから移住を考えている方に向けてメッセージをお願いいたします。

高橋:移住を考えた時、人生の一大事のように捉える方も多いと思います。例えば1年間住んでみて「やっぱり自分には合わなかったな」と感じたら地元に帰るとか、また別の場所を探すという選択肢もありだと思います。もし移住に興味があったり、この町だったら自分はこう活躍できるなというイメージが持てるようでしたら、まずは動いてみるのが一番ですね。気負わず地方に行ってみたら、そこからご自身の活躍できるフィールドが見つかるんじゃないかなと思っています。

栗山町では、これからも地域おこし協力隊を募集していく予定です。また、私どもが携わっている栗山町ふるさと納税(https://www.furusato-tax.jp/city/product/01429)も、今年度、新たなお礼の品を加え、より魅力的になります。こちらもぜひ興味のある方はチェックしてみてください。

高橋毅

合同会社オフィスくりおこ 業務執行役員

神奈川県横浜市出身。北海道大学大学院農学部を卒業後、株式会社リクルート北海道じゃらん入社。転職のため一度神奈川県へUターン就職するも、2016年より北海道栗山町の地域おこし協力隊として活動に従事。2018年、隊員だった石井翔馬氏とともに合同会社オフィスくりおこを設立。行政と協力し、栗山町ふるさと応援寄付(ふるさと納税)業務や商店街活性化業務、さらには地域おこし協力隊の採用など、地域おこしに関する業務に尽力。自社ECサイトをはじめ、飲食事業やゲストハウス事業など幅広く活躍している。

合同会社オフィスくりおこ:https://www.kurioco.com/